セピオライトの話

1.はじめに

セピオライトとは、天然に産出する粘土鉱物の一種で、独特の鎖状構造を有する含水珪酸マグネシウムです。日本語では「海泡石」、或いは長繊維のものは「山皮」とも称します。日本では、鉱業的に採取されず、ドロマイト層の間にサンプル程度に観察される程度しかないと云われています。従って、日本では馴染みがありませんが、欧米では昔から、様々な用途に使用されています。汚れを落とすために石鹸のように使われたとも云われています。工芸的には、海泡石のパイプが有名です。パイプに使われるセピオライトは、白くて緻密な物で、特にメルシャームと云われており、彫刻を施したパイプは見事なものです。

パイプ

 

2.セピオライトの生成

セピオライトには、成因の違いにより、長繊維のα型セピオライトと粘土状(短繊維)のβ型セピオライトがあります。α型セピオライトはドロマイト層にマグマが侵入したときの熱水作用で発生したもので、結晶度が高く明瞭な繊維状態が観察されます。これは主に中国や韓国で産出され、長繊維のものを特に「山皮」と称されています。一見木片や木の皮の様に見え、皮のようなしなやかさを持っているものもあります。

一方β型セピオライトは、堆積作用で生成し、繊維の発達が低く塊状或いは粘土状の呈をしています。これらは、堆積作用で生成したため、層を成した鉱床があり、トルコ、米国、スペイン等採掘されで工業的に利用されています。以上2種類のセピオライトは、外見は全く異なりますが、いずれも同じセピオライト鉱物で、

Mg8Si12O30(OH)4(OH2)4・8H2O

の化学組成で成り立っています。

セピオライト

セピオライト

3.セピオライトの特性

セピオライトの結晶は、枕木を積んで、1本おきに抜いたチャンネル構造をしており、多孔質で比表面積が 大きい繊維状形態をした粘土鉱物です。
このようなセピオライトは大きく3つの特性を有しています。
第1番目は、吸着性です。多孔質で比表評面積が大きく吸着性に優れており、脱臭、調湿等の吸着性を利用する分野に使用されています。焼成すると多孔質セラミックとしての用途開発が期待されます。
第2番目は、揺変性で、チクソトロピーとも云われる特性です。セピオライトを水に分散したスラリーに、大きい外力(せん断力)をかけると、粘度が低い状態になり、外力をかけるのをやめると高い粘度を示す特性で、塗料のタレ防止に活躍する特性です。
また、水等に分散することにより、増粘効果がありますので、各種分野に使用されています。
第3番目の特性は、粘土としての可塑性です。成形性、保形成の向上のため、無機バインダーとして利用されます。セピオライト自身が、多孔質で高比表面積の物質であるため、多孔質材料を成形する時に、材料の特性を損なわずに成形することが出来、また焼成すると、普通の粘土と同様に固結しますので、吸着材や触媒の担体の分野で活用されています。

セピオライトの構造イメージ図

セピオライト結晶図

セピオライト構造模式図

セピオライトの3大特性

4.近江鉱業株式会社のセピオライト

当社では、「セピオライト類」の商品を「ミラクレー」の商標で現しています。 これは多彩な特性を持つ粘土であることから、「ミラクル(奇跡)」と「クレー(粘土)」をつなぎ合わせた造語で、当時の社長が命名しました。当社では、トルコ産、米国産の2カ国の産地のものを扱っており、それぞれ特徴が異なり適する用途も異なります。製品の形としては、粉末のみならず、成型したもの、更には触媒の機能を付与したものを提供しています。